2025-26シーズンの冬移籍市場(2025年12月〜2026年1月)では、日本人選手の海外挑戦が例年以上に活発になった。行き先はドイツ、オランダ、ベルギーといった欧州の実戦環境が中心で、将来性を見込んだ若手の移籍や、出場機会を確保するためのレンタルも目立つ。一方で、豪州や南米といった新しい選択肢も生まれ、キャリアの描き方が多様化しているのも特徴だ。本記事では、この冬に動いた日本人選手の移籍情報を整理しつつ、背景にある傾向や注目ポイントをまとめていく。
2026年1月の海外移籍
- 指宿洋史(FW / 34歳)
イースト・ベンガルFC → ウェスタン・シドニー(完全移籍) - 新川志音(FW / 18歳)
サガン鳥栖 → シント・トロイデン(完全移籍) - 佃颯太(DF / 18歳)
横浜FC → ヘント(レンタル) - 齋藤俊輔(MF / 20歳)
水戸ホーリーホック → ウェステルロー(完全移籍) - 高橋仁胡(DF / 20歳)
セレッソ大阪 → アルメレ・シティ(レンタル) - 高井幸大(DF / 21歳)
トッテナム・ホットスパー → ボルシアMG(レンタル) - 安藤智哉(DF / 26歳)
アビスパ福岡 → ザンクトパウリ(完全移籍)
2025年12月の海外移籍
- 貴田遼河(FW / 20歳)
名古屋グランパス → アルヘンティノス・ジュニオルス(レンタル) - 田中聡(MF / 23歳)
サンフレッチェ広島 → デュッセルドルフ(完全移籍) - 秋山裕紀(MF / 25歳)
アルビレックス新潟 → ダルムシュタット(完全移籍) - 小杉啓太(DF / 19歳)
ユールゴーデン → フランクフルト(完全移籍) - 神代慶人(FW / 18歳)
ロアッソ熊本 → フランクフルト(完全移籍) - 冨安健洋(DF / 27歳)
無所属 → アヤックス(完全移籍)
完全移籍(10名)
- 指宿洋史(ウェスタン・シドニー)
- 新川志音(シント・トロイデン)
- 齋藤俊輔(ウェステルロー)
- 安藤智哉(ザンクトパウリ)
- 田中聡(デュッセルドルフ)
- 秋山裕紀(ダルムシュタット)
- 小杉啓太(フランクフルト)
- 神代慶人(フランクフルト)
- 冨安健洋(アヤックス)
- (上記以外はなし)
レンタル(3名)
- 佃颯太(ヘント)
- 高橋仁胡(アルメレ・シティ)
- 高井幸大(ボルシアMG)
今冬のキーワードは「若手の先行投資」と「実戦の場」
この冬の移籍市場で目立ったのは、行き先が「欧州の実戦環境」に強く寄ったことだ。2025年12月はドイツとオランダが中心。フランクフルトに2名加入(小杉啓太、神代慶人)という分かりやすいトピックに加え、デュッセルドルフやダルムシュタットなどドイツ勢への移籍が続いた。2026年1月もその流れは継続しつつ、ボルシアMGやザンクトパウリといったブンデスリーガ勢、ヘント/アルメレ・シティ/シント・トロイデン/ウェステルローなど、ベルギー・オランダの“出場機会を確保しやすいリーグ”へ広がっている。冬は補強の性格上「即戦力」か「将来の投資」かがはっきり出やすいが、今回の日本人選手の動きは後者がかなり多い印象だ。
特に象徴的なのは「若手の先行投資型移籍」が増えた点。18歳〜20歳の選手が複数名、欧州へステップを踏んでいる。フランクフルトに渡った小杉(19)と神代(18)は、クラブとして将来性のあるタレントを早い段階で押さえる狙いが透ける。ベルギーのシント・トロイデン(新川志音/18)は日本人選手の受け入れ実績もあり、環境面のハードルが比較的低い一方で、欧州での実戦経験を積むには十分な舞台だ。ヘントへのレンタル(佃颯太/18)も同様で、育成・起用に強みを持つクラブへ“行けるうちに行く”動きが加速している。
もう一つの傾向は「レンタルの意味合いが明確」なこと。今回のレンタルは、佃(ヘント)、高橋仁胡(アルメレ・シティ)、高井幸大(ボルシアMG)の3件。いずれも「実戦機会の確保」と「適応のためのステップ」を主目的にしたレンタルに見える。欧州では冬のレンタルが“お試し”になりがちだが、逆に言えば半年で評価を勝ち取り、来季以降の序列を上げるチャンスでもある。特に高井はボルシアMGというブンデスリーガの舞台で、練習強度・判断速度・対人の基準を一段引き上げられる。短期間でも得られるものは大きい。
クラブ側の狙いで見ると、ドイツ勢が日本市場を「マーケティング」だけでなく「戦力・投資」として扱い始めている点も見逃せない。フランクフルトの2名加入は象徴的だし、デュッセルドルフ、ダルムシュタットといったクラブも、実戦で伸びるタイプの選手を獲得してチームにフィットさせるのが上手い。ブンデスリーガのザンクトパウリ(安藤智哉/完全移籍)も、強度の高いリーグで即戦力を求めながら、クラブのスタイルに合う選手を選ぶ傾向がある。ここに日本人が入ってくるのは、個の能力だけでなく、戦術理解や規律面への評価が高まっている裏返しでもある。
一方で、欧州一辺倒ではなく、キャリアの選択肢が広がっていることも今回の特徴だ。指宿洋史(34)はオーストラリアのウェスタン・シドニーへ完全移籍。経験値の高いストライカーがAリーグへ渡るのは、プレー環境だけでなく生活面も含めた“次の挑戦”として興味深い。さらに、貴田遼河(20)はアルゼンチンのアルヘンティノス・ジュニオルスへレンタル。南米は適応難度が高い一方で、対人と駆け引きの濃度が非常に高く、FWにとっては成長材料が詰まっている。欧州だけが正解ではなく、選手の特徴に合った市場へ出ていく流れが出てきたのはポジティブだ。
ポジション別に見ると、DFの動きが最も多い。これは世界的にも「守備の強度とビルドアップ能力を両立できるDF」の価値が上がっていることとリンクする。欧州で評価されるのは、単に守るだけでなく、前進できるか、ラインを上げられるか、1対1を止められるか。そこに対応できる素材を若いうちに確保するクラブが増えている。今回、DFの移籍が多いのは偶然ではないはずだ。
この冬の移籍は、結論として「若手の欧州挑戦が加速し、ドイツ・オランダ・ベルギーを中心に“実戦の場”へ集まった市場」だったと言える。ここから先は、移籍そのものよりも“出場時間”がすべてだ。完全移籍であっても序列はゼロからの勝負。レンタルならなおさら短期決戦になる。後半戦でどれだけピッチに立ち、数字やインパクトを残せるか。2025-26シーズン冬の日本人移籍組は、春先にかけて評価が大きく動く可能性が高い。まずは各選手の起用状況と、最初の10試合の出場時間に注目したい。

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